tblastn クエリー配列がアミノ酸で、検索対象データベースが塩基配列の時に利用するプログラムである。検索する際に、核酸データベースは一度アミノ酸配列に翻訳される。なお、翻訳に関してフレームシフトを考慮して 3 通り、さらに配列の左から読むか右から読むかの 2 通りと合わせて合計 6 通りの翻訳が行われる。
データベースを作成
まず、検索対象となるデータベースを作成する。ここではマウスのゲノムデータベースを作成する。その元ファイルは Ensembl (FTP) からダウンロードできる。この例では、Mus_musculus.GRCm38.70.dna.toplevel.fa.gz をダウンロードして利用する。ファイルは gzip で圧縮されているため、まずは展開する。
gunzip Mus_musculus.GRCm38.70.dna.toplevel.fa.gz
次に、ここで得た FASTA ファイルを makeblastdb
コマンドに与えて、blast 用のデータベースを作成する。ここでは、データベースの名前を MusNuclDB と命名している。データベースの名前は任意に付けることができる。また、データベース化する配列が塩基配列であることを示すために、-dbtype nucl
を指定する。
makeblastdb -in Mus_musculus.GRCm38.70.dna.toplevel.fa -dbtype nucl -out MusNuclDB -parse_seqids
実行が終了すると、ディレクトリに「MusNuclDB.nhr」、「MusNuclDB.nog」、「MusNuclDB.nsi」、「MusNuclDB.nin」、「MusNuclDB.nsd」、「MusNuclDB.nsq」のファイルが生成されます。これら全部合わせてデータベースとなります。
この例では、Ensembl でダウンロードした全ゲノム配列を使用したが、独自に定義した配列を FASTA ファイル(.fa)に保存して、同様な手順でその FASTA ファイル中の配列をデータベース化することもできる。
tblastn による相同性検索
データベースを作成したのちに、そのデータベースに対して検索を行うことができるようになる。検索キーワードとして、次のような入力配列(クエリー配列)を用意し、FASTA ファイル(query.prot.fa)に保存する。
>unknown
LDLRNVHHSFWNIWTDSEDSDYSAEILDEKKALQVRPRYGLRQRLKVTVDLCIRSCLDEA
QTWFLKWAQERKGSLYFCCTKMKIWTLPERALRQIFHVFDPEHIMELELNTEWTLIELTH
FAPYFGQMRNLRKVFLAPLHKIDFHLPNRTRVTEVKCINKFASQFSKFNCLQHLFMFCVH
FLRSQMNQVLGCLMTPLKTLSITYSLISQRDLDSFACCQSLF
b次に、tblastn
にデータベースのパス(-db
)、クエリー配列のファイルのパス(-query
)、そして出力結果を保存するファイルのパス(-out
)を指定して、検索を行う。
tblastn -db MusProtDB -query query.prot.fa -out result.txt
相同性検索の結果
検索が正しく実行されると、ディレクトリに result.txt が生成され、検索結果が表示される。
TBLASTN 2.2.28+
Reference: Stephen F. Altschul, Thomas L. Madden, Alejandro A.
Schaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J.
Lipman (1997), Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of
protein database search programs, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402.
Database: Mus_musculus.GRCm38.70.dna.toplevel.fa
75 sequences; 3,783,309,620 total letters
Query= unknown
Length=222
Score E
Sequences producing significant alignments: (Bits) Value
lcl|JH584299.1 dna:scaffold scaffold:GRCm38:JH584299.1:1:953012:... 400 5e-125
lcl|5 dna:chromosome chromosome:GRCm38:5:1:151834684:1 REF 400 5e-125
lcl|GL456354.1 dna:scaffold scaffold:GRCm38:GL456354.1:1:195993:... 387 2e-120
lcl|JH584297.1 dna:scaffold scaffold:GRCm38:JH584297.1:1:205776:... 386 6e-120
lcl|JH584296.1 dna:scaffold scaffold:GRCm38:JH584296.1:1:199368:... 385 1e-119
lcl|JH584298.1 dna:scaffold scaffold:GRCm38:JH584298.1:1:184189:... 385 1e-119
lcl|MG4136_PATCH dna:chromosome chromosome:GRCm38:MG4136_PATCH:1... 194 2e-53
lcl|4 dna:chromosome chromosome:GRCm38:4:1:156508116:1 REF 194 2e-53
tblastn で利用できるオプション
オプション | 意味 |
-query | クエリー配列のファイル名(入力ファイル)を指定 |
-query_loc | 入力ファイルの何文字から何文字目までをクエリー配列とするのかを指定 |
-db | データベース名を指定 |
-out | blast 検索結果を保存するファイル名を指定(出力ファイル) |
-outfmt | 出力ファイルのフォーマットを指定。 |
-evalue | E-value の閾値 |
-word_size | ワードサイズ |
-gapopen | 開始ギャップのペナルティ |
-gapextend | 伸長ギャップのペナルティ |
-matrix | スコアマトリックスを指定(BLOSUM62やPAM32などを指定) |
-threshold | ワードスコアの閾値。指定したワードサイズでデータベースに照合するとき、そのスコアが閾値以上の場合にのみ、blast 検索を開始する |