膜タンパク質

膜タンパク質の細胞間のコミュニケーションや分子・イオンの輸送などに非常に重要な役割を果たしている。このような膜タンパク質について、そのアミノ酸配列は解読が進められているが、その立体構造についてはあまり解かれていない。全遺伝子のうち 25-30% の遺伝子が膜(貫通型)タンパク質をコードしていると言われているが、わずか 2% しか構造が解かされていない。それだけ膜タンパク質の立体構造解析が困難である。

膜タンパク質の分類

タンパク質はその特徴に応じて様々な分類方法で分類することができる。タンパク質と生体膜との関係を見たとき、生体膜に付着しているタンパク質をとくに膜タンパク質という。膜タンパク質は、生体膜を完全に貫いている transmembrane protein や貫通していない peripheral membrane protein などがある。

  • integral membrane protein (内在性膜タンパク質)
    膜領域に常に付着しているか、貫通しているようなタンパク質
    • polytopic (transmembrane)
      膜領域を完全に貫いているタンパク質
      • alpha helical transmembrane
        α-ヘリックスが膜領域を貫通しているようなタンパク質
        monotopic membrane protein monotopic membrane protein
      • beta barrel transmembrane
        β-バレルが膜領域を貫通しているようなタンパク質
        monotopic membrane protein monotopic membrane protein
    • monotopic
      膜領域に入り込んでいるが、反対側に貫通していないようなタンパク質
      monotopic membrane protein monotopic membrane protein monotopic membrane protein
  • peripheral membrane (表在性膜タンパク質)
    一時的に膜領域に付着あるいは入り込んでいるようなタンパク質

膜タンパク質のデータベース

膜タンパク質を登録しているデータベース化は PDB を始めとして、OPM、mpstruct など多数知られている。しかし、これらのデータベース同士では、必ずしも同じ定義あるいは方法で膜タンパク質を分類しているわけではない。データベースによって分類方法が異なるために、利用者は十分に注意を払う必要がある。

OPM PDB から monotopic、peripheral、membrane-bound peptide を取得し、タンパク質と膜の位置関係を計算して両者の関係を登録したデータベースである。突然変異やリガンドの結合などにより異なる立体構造をとる同一タンパク質も登録している。データは 4 つの階層レベルで登録され、それぞれ Type、Class、Superfamily、および Family である。
  1. Type: transmembrane、monotopic/peripheral、membrane-active peptides
  2. Class: all-α、 all-β、α+β、α/β、nonregular など
  3. Superfamily: 立体構造のアラインメントに基づき、進化関係があると認められたタンパク質の一群
  4. Family: アミノ酸配列に相同性が認められたタンパク質の一群

OPM では現在、598 生物種に渡り計 2,630 件のタンパク質が登録されている(2014/10/29)。

Lomize MA, Lomize AL, Pogozheva ID, Mosberg HI. OPM: orientations of proteins in membranes database. Bioinformatics. 2006, 22(5):623-5. PubMed Abstract
PDB PDB では膜タンパク質を membrane protein として定義してまとめられている。膜タンパク質のうち、mpstruct にも登録されているタンパク質には mpstruct の登録情報も記載されている。
Berman HM, Westbrook J, Feng Z, Gilliland G, Bhat TN, Weissig H, Shindyalov IN, Bourne PE. The Protein Data Bank. Nucleic Acids Res. 2000, 28:235-42. PubMed Abstract
PDBTM PDB から取得したデータを元に注釈付を行っているデータベース。2,272 件の transmembrane タンパク質が登録され、そのうち alpha helical のものは 1,967 件、beta barrel は 297 件。
Kozma D, Simon I, Tusnády GE. PDBTM: Protein Data Bank of transmembrane proteins after 8 years. Nucleic Acids Res. 2013, 41:D524-9. PubMed Abstract
TOPDB transmembrane のトポロジーデータが登録されているデータベース。主に PubMed 検索、PDB、UniProt、および UniProt などからデータを取得し再解析を行っている。現在 4,190 件のタンパク質、75,211 件のトポロジーが登録されている。膜とタンパク質の位置関係や方向性だけでなく、局在オルガネラも登録されている。
Dobson L, Langó T, Reményi I, Tusnády GE. Expediting topology data gathering for the TOPDB database. Nucleic Acids Res. 2014, 43:D283-9. PubMed Abstract
UniProt 実験的に決定されている transmembrane のほかに、transmembrane のファミリーに属しているタンパク質や予測プログラムにより transmembrane のドメインを持つと判定されたタンパク質も transmembrane として注釈付を行っている(UniProt help)。
SCOP
SCOPe
SCOP/SCOPe はタンパク質を立体構造に基いて分類して登録しているデータベースである。膜タンパク質に特化しているデータベースではないが、膜タンパク質を class f としてまとめて分類している。
Murzin AG, Brenner SE, Hubbard T, Chothia C. SCOP: a structural classification of proteins database for the investigation of sequences and structures. J Mol Biol. 1995, 247(4):536-40. PubMed Abstract
Andreeva A, Howorth D, Chandonia JM, Brenner SE, Hubbard TJ, Chothia C, Murzin AG. Data growth and its impact on the SCOP database: new developments. Nucleic Acids Res. 2008, 36(Database issue):D419-25. PubMed Abstract
Andreeva A, Howorth D, Chothia C, Kulesha E, Murzin AG. SCOP2 prototype: a new approach to protein structure mining. Nucleic Acids Res. 2014, 42(Database issue):D310-4. PubMed Abstract
mpstruct 内在性膜タンパク質を集めているデータベースである。登録件数が少ない。
HTP ヒトの α-peripheral 膜貫通タンパク質を登録しているデータベースである。現在は 4,998 件のタンパク質が登録されており、1 回貫通型と 7 回貫通型が多い。